
やさしいライオン
ブルブルとムクムク
子供を亡くした母親犬が、親を亡くしたライオンの赤ちゃんを育てていた。
ライオンの名はブルブル、いつも震えていたから。犬の名はムクムク、太っていたから。
ブルブルはどんどん大きくなり、ムクムクより大きくなった。二匹は仲良く暮らしていた。
でも、そんな幸せな日は続かず、突然別れが来た。
ブルブルはサーカスに売られ、器用なブルブルは直ぐに人気者になった。
人間は、来る日も来る日もブルブルをこき使った。
ブルブルは、昔の事を忘れてしまった。
ある晩寝ていると、遠くの夜空から懐かしい子守歌が聞こえた。
それはムクムクの声だった。
ブルブルは抑えつけられた物が爆発して声を出した。
「お母さん!」
「ワン!お母さんに会いたい!」忘れていた昔の声だった。
ブルブルは、精一杯の力で檻から飛び出し町に向かった。
鉄砲を持った警官がその後を追いかけた。
「ズドーン!」
煙がはれた翌朝、ブルブルとムクムクが抱き合って倒れていた。
雪の積もった小高い丘に、ブルブルの足跡が雪の上についていた。
不思議な事に足跡は丘の途中からはっきりとなくなっていた。
その晩、年老いた犬を背負ったライオンが空を飛んでいるのを何人もの人が見た。
柳井たかし作 NHK朝ドラ「アンパン」より
何気なく見ていた朝ドラで、この物語を見て号泣した。私は小学校1年生の時両親が離婚して母に引き取られ、二人のアパートでの生活が始まった。昔は、子供を女手一人で育てる事が大変だった。日曜日に疲れ果てて寝ている母に私が目玉焼きとパンを焼いて遅い朝食を二人で食べた。親戚と祖母に預られ、小学、中学は二度転校をした。どこでも友達は直ぐ出来て、毎日が楽しかった。勉強をする必要はなく、成績は悪かった。人生で一番勉強したのは中3の夏休み以降の受験勉強だった。羽目を外し、要領が悪い私は、全学校で、放課後職員室で正座をした。私にとっては大した事ではなかったが、仕事をしている母が呼び出される事がとても辛かった。高校は私立で寮に入った。母はお金がとても大変だったと思う。夏休みに家に帰った時、陰で泣いている母を見た。私を大学まで育てて貰って今でも感謝している。大卒後、就職もせず、商売をしたいという私を母は全力で応援してくれた。母は家が欲しかったが買えなかった。母が言わなくても、私はその事をよく分かっていた。私は、まさか自分が不動産屋になるとは思ってもみなかった。
母と私の家への思いが、この道に導いてくれたのかもしれない。
今は、ダブルワークが当たり前になったが、子育ては大変だ。今も昔も親は子供を、子供は親を思う気持ちは変わりない。ブルブルとムクムクの様に。
「ワン!お母さんに会いたい!」
不動産と関係ない話を最後までお読み頂きありがとうございました。
2025.9.26 鈴木康純




ムクムク
ブルブル
赤ちゃんライオン
幸せな日々




成長していく
大きくなった
サーカス
わん!お母さん!